HIGASHI LOG

コンサルタント思考の備忘録

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会計数値をリアルに結びつける練習

こんにちは、ヒガシです。ファイナンスの仕事を長年やっているとある能力が身についてきます。それは、会計数値から、ある程度ビジネスの実態というものが見えてくるというものです。例えば、売上や仕入が数字ではなく、リアルな人の活動レベルとして見えてくることです。

 

会計数値を数字以上に見る方法

例えば日用品メーカーライオンの数値を見てみましょう。

2015年のオーラルケア部門の連結売上高は594億円です。

http://v4.eir-parts.net/DocumentTemp/20170123_090841152_ckgfjziq1425os553hhbzw45_0.pdf

 

ライオンのオーラルケアブランドは、クリニカ、デンターシステマ、デントヘルス等が有名ですね。また、ライオンは歯科向けの衛生用品も販売しているようです。

仮に日本の人口を1億2000万人と置いても、一人当たり500円程度、ライオンのオーラルケア用品を使っている計算になります。

もちろん、世の中のオーラルケア用品はライオン以外にもあるので計算が少しよろしくないので、仮に6人に1人が使ってらと仮定しましょう。6倍の約3000円です。例えば、デンターシステマは近所のドラッグストアで328円で売ってるので、卸が7割くらいとしたら230円くらい、一年で13本くらい買ってる計算です。おそらく購入するのは歯ブラシだけでは無いでしょうから、まずまずの数字ではないでしょうか?

何が言いたいかというと、会計数値をただの数字ではなく、物流や実際の消費者がどれくらい手に取るのかといったリアルな行動に置き換えていくことが会計数値を見るには大事だと思うということです。

 

ヒントは日常にある

なんだと思われるかもしれませんが、公表書類に、こういった簡単なフェルミ推定のような遊びを繰り返し、ビジネスモデルを分析していくと色々な企業の姿が見えてくるのです。

BtoCの世界であれば、誰でも触れることができます。

コンビニに行き、売っている商品を見る、テレビのCMを早送りせず、何を売っているのか、この企業はどういうビジネスなのかという分析を繰り返していくと、会計数値の裏にある活動がありありと見えてくるようになります。

日常、自分が手に取るもの、見るものの裏にどんな活動が関わっているのか?消費者の立場だけでなく、会社を見る目線で見てみると、今まで見えなかった世界が見えてくるかもしれません。

読書ノート_「本を読む本」

こんにちは、ヒガシです。仕事柄、様々なジャンルの本を読みますが、ふと、このままの読書を続けてどれくらいの効果があるのだろうかと想像しました。過去に、体系的に読書を技術として学んだこともありません。そこで、一度、読書法について整理することにしました。

 

読書については、過去にショーペンハウエルの「読書について」を読了し、

読書とは他人にものを考えてもらうことである。一日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく。

には大いに納得しました。今回はそれも踏まえて、主体的な読書技術を使って、自ら考えるために「本を読む本」を手に取りました。読書技術の古典的な名著だそうです。

読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

 

 

本を読む本の構成

「本を読む本」は初版1940年、アメリカで刊行された本で各国で翻訳され、出版されてきました。私が読んだ講談社学術文庫版は、「思考の整理学」でお馴染みの外山滋比古が訳者の一人となっています。

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

 

「本を読む本」は4段階のレベルで読書を定義しており、しかもその対象を読むに値する良書に限定しています。4段階のレベルは、

1.初級読書

2.点検読書

3.分析読書

4.シントピカル読書

の4つになります。中でも、この本では分析読書に重点を置いています。

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分析的読書について

分析的読書では、本の分類に始まり、著者と認識合わせを行い、問題、命題、論証を把握し、最後に批評を行うというところまでを行います。ここには三つの段階と15の規則があります。

初見では、いくつ規則があるかわからない中で「第〇〇の規則は〜」と説明され、到底理解できなかったので、構成の整理も兼ねて、1スライドにまとめました。

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①本を見分ける②内容の解釈③批判の3段階で分析読書は展開されています。また、規則の9~11は個人的には規則というよりも決まり事と捉えました。したがって、実質的には12の規則を作業として実施することで十分でしょう。

第一段階では、全体の要約としてどのようなジャンルの本で、何について語っており、全体と部分がどう構成され、問題はなんであるかを把握することで、何の本であるかを見分けるとなっています。

第二段階では、それに対するキーワード、命題、論証、顛末の把握を行い、本の内容を解釈するということになります。第一段階と第二段階併せて、ロジカルシンキングでいうところのイシューツリーの作成ということになるでしょうか。命題の証明という解決手段を含めた切り口を反映していくということになるかと思います。

第三段階では、著者の知識不足、知識誤り、論証不足、論証自体の批判を行い、自らが納得できるものかどうかを判断する段階といえるのではないでしょうか。

 

単に本を読み学ぶ、受け入れるということではなく、自らその主張を再構成していく過程を経て、納得できるかどうかを判断していくことが、いわゆる読むだけの読書や本の内容を行動に移す読書と「分析読書」の違う点です。

 

レベル4のシントピカル読書についても、分析読書同様、一定のテーマに沿ってイシューツリーを作っていき、主張に対して、複数の本からの観点で、論証をブラッシュアップしていく点では、分析読書をまずは身に着けることが最優先となります。

 

まとめ

分析読書の内容については、現代であればイシューツリーを作ってと言うのは簡単ですが、この本の原著が発刊されたのは1940年です。それこそフレームワークやらロジカルシンキングなんて何それという時代ですので、その時代に正しく本を読むための技術がこれだけ整理されていたのは驚異的ではないでしょうか。

こういった本を読む技術を身に着けることができれば、読むに値する本か、この本の主張や論理構成は何か、その上で中身を読んでいく読書の基礎になるでしょう。しっかりと構成された良書を選び、良書については分析読書やシントピカル読書を実践してみようと思います。

 

本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)

 

 

How to Read a Book (A Touchstone Book) (English Edition)

How to Read a Book (A Touchstone Book) (English Edition)

 

 

読書ノート-孫子

こんにちは、ヒガシです。古典の名著と名高い「孫子」を読みました。今回は、そのいくつかを取りまとめていきます。

なぜ孫子を読むのか

孫子は古代中国の兵法書、要するに戦をどのように行うべきか、行わないべきかということを纏めた書ですよね。ただ、「孫子」の冒頭にもあるように、孫臏、孫武どちらが書いたのか、どこまでが原著なのかということには議論があったそうです。

 

話を戻して、なぜ孫子を読むのかということです。

戦、ビジネス、目的ややり方の違いはあれど、共通する点は多いのではないかと考えています。また、これだけ時代の永きに渡り、生き残る書である以上、エッセンスとなることがあるのではないかと。敵と味方の目的、戦を起こすべき時、起こすべきでない時、リソース配分といった部分に共通の考えを期待します。

 

孫子兵法の構成

孫子の内容は全部で13篇に分かれています。

  1. 計篇
  2. 作戦篇
  3. 諜攻篇
  4. 形篇
  5. 勢篇
  6. 虚実篇
  7. 軍争篇
  8. 九変篇
  9. 行軍編
  10. 地形篇
  11. 九地篇
  12. 火攻篇
  13. 用間篇

実践をベースに帰納的に考えられたエッセンスがそれぞれの篇ごとに纏められています。もちろん現代ビジネスに適用できるものもあれば、全くできないような火攻篇のようなものもあります。

 

①戦争とは国家の大事=新規事業とは企業の大事

戦争とは国家の大事である。死活が決まるところで、存亡の分かれ道であるからよくよく熟慮せねばならぬ

孫子 計篇一  金谷治訳注 岩波文庫

戦を起こすことは国家存亡をかけたことであるから、よく考えてことを起こさなくてはいけない。文字通り命をかけた意思決定です。

翻ってビジネスにおいても、意思決定を誤れば、損失につながり、最終的には市場からの撤退に結びつきます。

孫子では、その時に判断すべきことについてこう述べています。

5つの事がらではかり考え、目算で比べあわせて、その時の実情を求めるのである

孫子 計篇一 金谷治訳注 岩波文庫

 

 

五つの事がらとは、道、天、地、将、法と定めています。道とは人民の心、天とは季節、地とは地形、将とは将軍、法とは軍政のことです。これはこのまま、会社においても、道とは社員の心、天は景気の市場動向、地とは地域、将とは管理職、法とはガバナンスと言い換えることができます。

社員の心が、一体化されており、景気や市場の環境が上向きで、地域に利点があり、優秀な管理職がいて、統治が効いていれば、勝てる可能性が高いといえるのではないでしょうか?

企業でかけやすいのは道、すなわち従業員がついてこれるものかということではないでしょうか。場合によっては、抵抗勢力化したり、逃げ出すことにもなりかねません。上の人間だけで、残りの四つは考えられても、残りの一つで負ける可能性も考慮に入れられるか、ということは発見でした。

 

②軍を起こすについて=事業を運営することについて

孫子はいう。およそ戦争の原則にとしては、戦車千台、輜重車千台、武具をつけた兵士十万で、千里の外に食糧を運搬するというばあいには、内外の経費、外交上の費用、にかわやうるしなどの材料、戦車や甲冑の供給などで、一日に千金をも費やしてはじめて十万の軍隊を動かせる。

孫子 作戦篇一 金谷治訳注 岩波文庫

 

あらゆる戦争に関する補給やそれにかかる費用を鑑みて初めて、人を兵士として、戦車を動くものとして、扱うことができるということです。これは言われれば当たり前と思う一方で、普段はなかなか意識できないところです。

ビジネスを行おうと思えば、場所を用意し、人を雇わねばなりません。人を雇うのは年収の2倍は費用がかかります。また、ものを作り、売ろうと思えば、研究開発、製造、販売、経理、人事に総務も必要です。

 これらを意識して、ビジネスの計算ができなければ、儲けを出すことは困難ではないでしょうか。

 

③測定可能であること

戦争の原則としては5つの大切なことがある。第一には度-ものさしではかること。第二は量-ますめではかること。第三には数-数えはかこと。第四には称-くらべはかること。第五には勝-勝敗を考えることである

孫子 形篇一 金谷治訳注 岩波文庫

 

これは「度」で、戦場の広さ、距離を計り、「量」にてそれに応じた物量を考慮し、「数」にて人数を考え、敵味方の能力を「称」で比べ、「勝」勝敗を考えるというものです。当時の戦の要素をフレームワークにして、勝敗にまで結びつけているのは驚異的です。

ビジネスで言えば、市場を計り、投入するリソースを計り、人を張り、そして利益見込みを図ることを数字に基づいてしっかり図ることが必要だということではないでしょうか。行き当たりばったりではなく、数字に基づいたハードな根拠を持つことは生死がかかるビジネスでも同じでしょう。

 

これ以外にもビジネスに応用可能な格言、用意周到な準備の大切さ、ことを起こす際の心構えといった内容が散りばめられております。新人時代ならわからなかったことも、今ならば、どう応用すべきか、どこが新しい視点かがわかるようになった今が読み時なのだと思います。

ビジネスの戦を起こす=事業を運営する側に回る方が何を考えるべきか、何を考えているかを知りたい方にオススメです。

 

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)