企業の内部留保は誰のものか?
NHKのクローズアップ現代で企業の内部留保を投資や消費拡大のための給与に使えるという議論がありました。それを見て、違和感というか、ちょっと何を言ってるのかわかりませんでした。
企業の内部留保とは?
企業の内部留保とは、企業の利益のうち配当等で社外に流出していない部分の過去からの溜め込んでいる部分です。例えば、会社が毎年100億円の利益をあげて、40%の税金を納めます。残った利益60億円から、半分の30億円を配当に回すと、30億円相当が会社に残ります。これが内部留保です。
更にこれが10年続くと、企業は300億の内部留保があることになります。
会社はこの利益をただ持っているわけでは無く、再投資をして、更に利益が上がるような事業投資を行なっていくことで大きくなっていきます。
個人で例えるなら、あなたが稼いで手に入れた貯金も元を辿れば内部留保だし、家を持ってたら、借金を除いた金額も内部留保です。
内部留保を給与アップのあてにすべきではない3つの理由
わたしは、内部留保は以下の3つの理由から、給与アップのあてにすべきではないと考えています。
1つ目は現行の法制度では、株式会社は株主のものであり、会社の内部留保も株主のものであるということです。自分のお金をどう使おうが、誰かに後ろ指を指されることはないでしょう。これでは、お金があるのだからよこせというのと同じです。
2つ目は、内部留保についてでも触れた通り、そもそも稼いだお金は投資に回っている場合があることです。現金で持ってないならば、給与アップの分、借金しなくてはいけませんが、利息は誰が払ってくれるのでしょう?
3つ目は、内部留保はすでに給与も、賞与も、税金も払った後の金額だということです。一度給与を払い、リスクを負って得た利益から更に給与をあげるべきとはなんでしょうか。これも1つ目同様、過去に稼いでるんだからよこせ?な発想です。
内部留保を狙ってきたらどうすべきか
企業の資金調達は、資本か、負債を増やすことしか手段がありません。内部留保は、配当等で株主に返してしまうと、資金が再度必要になった場合、資本か負債を増やす資金調達を行うことになり、調達コストがかかることになります。なので経営者的にはある程度留保したい気持ちもあるんでしょうね。
また、国が内部留保に対して何かしらの施策を打つならば、
- 自社株買い
- 内部留保の資本組み入れ
- 配当
のいずれかを淡々と実施するだけでペナルティを避けられます。なんだかなぁ。
国が本気で給与アップをしたいのなら、法制度で対応すべき
だいたい内部留保があるからなんてこと言われても、会社の担当者は動きようがないですからね。国に言われたので給与あげますか?なんて聞けないですよね。国が本気で企業に給与アップをして欲しいのならば、法制度で対応できることがあるはずです。
給与アップのインセンティブ
- 給与をあげた企業に対して、入札を有利にする
- 給与の増加分に対して税制上の優遇措置を与える
派遣労働の地位向上、限定
- 派遣労働という雇用形態を限定する
- 派遣労働のみ最低賃金を上げる
- 派遣労働比率の高い会社に対して税制、入札で不利にする
ただこれも、給与が上がるから、雇用が悪くなるのであれば逆効果ですので、ピンポイントで狙いたい企業群に対して効く、かつ、抜け道のないような施策をすることが必要でしょうね。
まとめ
内部留保、言葉の響きで余っている感がすごくしますが、内部留保が余ってるから給与を上げろ!という人は、簿記やファイナンスに明るくないか、よほど深遠な考えがあるのでしょう。
簡単な仕事、難しい仕事
コンサルタントにとって、簡単な仕事、難しい仕事を考えたことがある。
コンサルタントは、お客様の課題を、外部の立場から解決するために、有期で仕事をする。難易度は、課題自体の難易度、お客様の期待、課題に対する自身の能力経験で捉えている。
難易度と能力は単純な関係で、課題が難しければ難易度は上がり、能力が高ければ難易度は下がる。
期待値だけは違う。
お客様の期待値は、お客様自身の能力に左右される。お客様が能力経験に乏しければ、期待値に根拠が無くなり、現実に出来ないことを期待しだす。また、社内調整もあまり期待できない。
能力経験が豊富ならば、コンサルタントの提案の足元を見て、出来る範囲を詰めてくる。場合によっては、提案の検討アプローチを貰ってもう結構となる。
お客様の能力経験が豊富でも、乏しくても、コンサルタントにとっては難易度は高くなる。だからこそ、プロジェクトが破綻しない範囲に、期待値を擦り合わせていくことがプロマネに求められる。
作業として簡単なプロジェクトはあれど、期待値の調整が簡単なプロジェクトは無いので、簡単な仕事は無いというのが結論。
会計数値をリアルに結びつける練習
こんにちは、ヒガシです。ファイナンスの仕事を長年やっているとある能力が身についてきます。それは、会計数値から、ある程度ビジネスの実態というものが見えてくるというものです。例えば、売上や仕入が数字ではなく、リアルな人の活動レベルとして見えてくることです。
会計数値を数字以上に見る方法
例えば日用品メーカーライオンの数値を見てみましょう。
2015年のオーラルケア部門の連結売上高は594億円です。
http://v4.eir-parts.net/DocumentTemp/20170123_090841152_ckgfjziq1425os553hhbzw45_0.pdf
ライオンのオーラルケアブランドは、クリニカ、デンターシステマ、デントヘルス等が有名ですね。また、ライオンは歯科向けの衛生用品も販売しているようです。
仮に日本の人口を1億2000万人と置いても、一人当たり500円程度、ライオンのオーラルケア用品を使っている計算になります。
もちろん、世の中のオーラルケア用品はライオン以外にもあるので計算が少しよろしくないので、仮に6人に1人が使ってらと仮定しましょう。6倍の約3000円です。例えば、デンターシステマは近所のドラッグストアで328円で売ってるので、卸が7割くらいとしたら230円くらい、一年で13本くらい買ってる計算です。おそらく購入するのは歯ブラシだけでは無いでしょうから、まずまずの数字ではないでしょうか?
何が言いたいかというと、会計数値をただの数字ではなく、物流や実際の消費者がどれくらい手に取るのかといったリアルな行動に置き換えていくことが会計数値を見るには大事だと思うということです。
ヒントは日常にある
なんだと思われるかもしれませんが、公表書類に、こういった簡単なフェルミ推定のような遊びを繰り返し、ビジネスモデルを分析していくと色々な企業の姿が見えてくるのです。
BtoCの世界であれば、誰でも触れることができます。
コンビニに行き、売っている商品を見る、テレビのCMを早送りせず、何を売っているのか、この企業はどういうビジネスなのかという分析を繰り返していくと、会計数値の裏にある活動がありありと見えてくるようになります。
日常、自分が手に取るもの、見るものの裏にどんな活動が関わっているのか?消費者の立場だけでなく、会社を見る目線で見てみると、今まで見えなかった世界が見えてくるかもしれません。