ヒガシの日記

公認会計士コンサルタントの思考の備忘録

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東芝に見る、不振企業を襲う会計の損失とは?

東芝原発工事事業撤退に関して、具体的な時期をWSJが報道しました。それによると2月中旬までに撤退するとの東芝幹部からの情報のようです。工事事業はやめて、メンテに注力ということでしょうか?

m.jp.wsj.com

 

さらにIHIが自社が保有する3%相当のWesting's house株を東芝に買取請求できるらしいです。これもIHIのIRとしては発表せざるを得ないものの、東芝には痛いニュースです。

jp.mobile.reuters.com

 

東芝原発事業に関連して減損損失の計上を噂されています。この減損損失と併せて、不振企業を襲う3つの会計制度があります。

 

不振企業を襲う会計上の損失とは

不振企業を襲う三つの会計制度とは

  1. 減損会計
  2. 棚卸資産の評価損
  3. 繰延税金資産の評価性引き当て

です。

 

事業がうまく行っていない企業は、この3つを計上する可能性が出てきます。

1つ目の減損会計、これは企業が有する固定資産について、これを将来にわたって使うことで得られる収益が、固定資産の金額を上回らない場合は、その資産を差し引き0になるまで減額するという会計処理です。

東芝はお金を出して買った会社が、実は負債の塊でした。例えるなら、死んだ父の遺産を相続したら多額の借金してました状態です。その他諸々、原発事業を取り巻く環境が悪化しており、この減損損失を計上する可能性を指摘されています。

商社各社が、資源価格の下落でこの減損損失を計上したのは記憶に新しいでしょう。

 

2つめの棚卸資産の評価損ですが、スーパーで売ってる商品、定価で売れないと見切り品で安くなりますよね。あれと同じで、売れないなら売れる価格まで、棚卸資産の金額を減額するというものです。

 

3つめは繰延税金資産です。これは説明が少し難しいです。

前提として、会計の利益と税金計算の利益は時間的にずれがあるものがあります。一方、会計上の損益計算では、会計の利益と税金相当額が比率的に合うように計算します。

例えば、

税率:40%

会計利益:10,000

税務利益:12,000

とすると、実際の税金は12,000×40%=4,800です。

会計上の利益は10,000だけしか計上していないので、税金費用は、10,000×40%=4,000になるよう調整されます。差額の4,800-4,000=800は、将来会計上の利益が2,000計上された時点で、税金費用として計上します。そして、この差額はその時までは繰延税金資産という名前で資産計上されます。

税金は儲けがない場合にはかかりませんので、もし将来の利益がマイナスになることがわかっているならば、税金費用になるはずだった繰延税金資産は即費用計上されます。これが③繰延税金資産の評価性引き当てです。

もう10年以上前ですが、りそな銀行が国の管理下に置かれた時は、この繰延税金資産が議論を生み、担当の会計士が自殺するという事件が起きました、

 

これらの固定資産、棚卸資産繰延税金資産の減額分により、不振企業の損益計算書は事業の不振に加え、更に悪くなります。

 

あくまでこれらは会計上の損失です。では、次年度以降、事業が持ち直すとどうなるでしょう?固定費が低く、商品原価も低く、将来の繰延税金資産も再度計上され、見かけ上のV字回復を演出できます。 

 

私はこの3つの会計処理、マイナス方向への振れ幅が大きすぎるのではないかと考えています。一度、損益感覚が壊れたら、利益がものすごく出やすくなるので、マーケットでの競争感覚を掴むのに非常に苦労するのではないかと。ただ、これらの制度がないと投資家や利害関係者からは、事業の不振がいつまでも見えないということもあるので良し悪しあるのですが。

このような会計的な背景も踏まえて、しばらく東芝の動向は気になるところです。

 

日経新聞に減損会計とV字回復についての記事が2月5日土曜日にでましたのでリンクを貼っておきます。

http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGKKZO12493670T00C17A2PPD000/

りそなの会計士はなぜ死んだのか

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