HIGASHI LOG

コンサルタント思考の備忘録

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コンサルタントが超えられない一線

昔の話だが、ある会社で営業部門と経理部門が協力して課題を解決するプロジェクトに経理サイドのアドバイザーとして参画していた。営業部門からやりたいと言ったにもかかわらず、どれくらいの期間で、どういう役割分担で進めるのかといったことがいつまで経っても出てこない。プロジェクトに必要なものは出してこないのに、早く進めようという掛け声だけは聞こえてくる。

 

狐につままれたような気持ちで、ゴールや進め方を1つずつ確認していき、合意点を探っていたところ、経理部長に呼び出された。

ヒガシさん、申し訳ないけれども今回の件に関しては我々内部の人間だけでやらせて欲しい。筋が通った進め方ではらちが明かない。

今まで、こちらの提案に同意していた部長が言う。

ただならぬものを感じ、我々を外していただくのは一向に構わないが、せめて理由を教えて欲しいとお願いした。

 

「実は営業部門は、経理にメリットがあるといいつつ、経理に仕事を押し付けようとしている。しかも、この話は上同士で合意しているので、もう進め方でどうこうする話ではない。やるしかないんです。」

 

営業部門は素直にやって欲しいと言えば、経理に貸しを作ることになるし、システム改修の費用負担を求められるかもしれないことを見越して、のらりくらりとしていたのだ。会社全体で見れば、絶対に正当な方法で役割分担、責任範囲を決めてやるべき内容だった。それでも、部門の利益と、自分の保身を考えた営業部門はそれを良しとしなかった。

 

それでも関与すべきだったか?

 

それはわからない。

 

ただ、コンサルティングはクライアントが望み、論理的思考が必要な時にだけ仕事があるものだという一線を越えることはできないことを考えれば、社内政治の舞台に立つのはコンサルティングではないとは今でも思う。

仮説の必要性と構築方法

コンサルタントは常に仮説を持つことを強調されます。私も強調します。仮説のないことは、無手勝流にやっていくしかありません。仮説がなぜ必要なのかと、仮説の立て方についてまとめます。

 

仮説の必要性

まず仮説の必要性についてですが以前の記事で一部の内容についてはご案内の通りです。

 

higashinikki.hatenablog.com

仮説を用いると、各ステップのおおよその結果が仮説に基づいて推定でき、実施すべきタスクを予め把握することができます。

やったもん勝ちの時代-検証コストが下がると仮説思考の出番が減る? - ヒガシの日記

 

上記よりも大切なこととして、仮説は単なる効率化だけではなく、課題解決においての成否を決めることと同義だと私は考えています。なぜならば、プロジェクトの開始時点で何をやるのかわかっていない場合、それが狙った目的にたどり着くのは不可能だと考えているからです。 

例えていうならば、仮説のないプロジェクトは、たどり着く場所だけ決まっている旅行にいきなり出発するようなものです。歩いて行くのか、自転車、車、飛行機、船、どこに泊まるのか、泊まらないのか、食事はどうするのか、お金はどれくらい必要か、そういったことを抜きにして旅行が始まるのです。

コンサルタントに業務を依頼する人間で、結果が出なくてもいいからやってほしいという気概のある人はあまりいないと思います。なので、成果が求められる以上、はじめにその道筋が無いというのは、いかにあり得ないことか、お分かりかと思います。

 

仮説の構築方法

仮説の構築方法については、書籍等で案内されているので改めて私の方からお伝えするのも野暮ですが、個人的には、現状手に入っているファクト(情報のうち、確度が高いもの)だけから、想定しうる論理的展開を考慮して、目的達成の可否並びにその実現までに必要なアクション、情報を明らかにする思考法だと捉えています。

 

従って、まずは目的から設定し、その上でその検討に必要な要素を、要素分解や演繹により導いて、今持っているファクトと照らし合わせて、過不足を洗い出すのが手順かなと改めて整理してみると思います。

 

ややわかりづらいので、例を。

 

例えば、会社の中で、生産設備をリプレイスするかどうかの検討を考えてみます。

まず、目的としては、今の生産設備をリプレイスすることで、会社がより利益を得られる場合にはリプレイスするという結論になることが想定されます。(会社が営利を追求する性質上、利益が判断基準になる場面は多いです。)

次に、生産設備の投資に求められる要件として、品質、生産コスト、投資コスト、機会損失といった内容を想定し、それらをどのように検討すべきか、情報源は何かを棚卸します。

更に、それらの要件を、投資評価基準に当てはめると共に、その際の資金調達方法を考慮する方法を検討します。

 

上記は一例ですし、私は事業側は専門ではないので、ズレもあるかもしれません。ただここで言いたいのは、これらのステップをあらかじめ設定し、どこに時間がかかりそうか、どの作業同士が前後関係があるのかを整理することで、作業全体の期間、優先すべきことが見えるようになることです。精度を高くするのが目的ではなく、検討の概要をあらかじめ確認しておくのが目的なので、これくらいでもないよりマシです。

実際のプロジェクトでは、WBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれる作業計画に落とし込み、管理していきます。もっとも細かな作業やリサーチはアナリストに、ある程度の単位はコンサルタントに、テーマや領域はシニアやVPが受け持つことになります。

 

仮説構築力を身につけるには?

仮説構築力を身につけるのに必要なことは2つだと思います。

1つは、仮説の対象となる領域に対して、専門的な知識を持っておくことです。これはある領域における論点とその解決手段を知っていることは、仮説構築上の重要なポイントになるからです。会計財務領域であれば会計基準、税務、実際の会計処理のフロー、資金管理、ERP等のシステム周りの知識は基礎知識になると考えています。

もう1つは、仮説を実際に立てることです。なんとなく始めるでもなく、細かく計画を立てるでもなく、仮説を立ててやるべきことを順序だてていくことを繰り返すことで、だんだんとその型がわかってきます。これは実践の機会を作るしかありませんし、それがないなら身につける必要もありません。

 

学術的な仮説とは違うかもしれませんが、ビジネスの世界では、常に最新のことをやるわけではありません。ある程度型が決まっていることに対して、どう実践していくかも求められます。仮説思考はそういった場面で役立つスキルです。 

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

 

 

ビジネスコミュニケーションの質を高めるたった2つの質問

こんにちはヒガシです。本業が忙しく記事更新ができませんでしたが、ひと段落ついたため久々に投稿します。今日の話はその忙しい中で、同じコンサルタントにもかかわらず、コミュニケーションに非常に手間取ったことから、効率的にコミュニケーションするために心がけている2つの質問についてです。

 

効率的にコミュニケーションするためのたった2つの質問

この質問は、他人に向けてもそうですが、必ず自分に問いかけてほしいものです。

1つ目は「なぜ〇〇なのか?」です。

この質問は、主張の根拠を明確化します。質問の仕方としては、「なぜ、それをやる必要があるのか」、「なぜ、その選択肢になるのか」「なぜ、その主張が正解と言えるのか」といった具合です。これに答えられない主張は、論理的な根拠に欠けてしまう場合があります。

スタッフの資料をレビューしている時には、順序として、まず、なぜその主張が正しいのかを徹底的に詰め、次にこの言い方で伝わるのかということを考えます。

よくある質問としては

・なぜ、3つある選択肢の中でそれが選ばれるのか?

→他の2つが要件を満たさないorコストとメリットを比較した結果。

・なぜ、3つの選択肢で十分と言えるのか

→検討の要素が2つあり、選択肢がそれぞれ2つあるが、1つは条件を満たさないため。

・なぜ、その要件が、選択の根拠になるのか

→今回のプロジェクトの目的は〇〇であり、それを達成するには〇〇と〇〇の要件を満たす必要がある。〇〇は、この場合☆☆と言えるので要件としている。

といった形で質問の切り口を変えながら、誰から見ても検討が十分となるように主張を補強していきます。

 

2つ目の質問は「それで、どうなるのか?」です

この質問は、主張を実行することによる帰結を確認します。

「 それをやるとどういうことが起きるのか」「それが、全体の目的にどう結びつくのか」といったことを質問することで、結果をしっかり捉えて考えているかと、そこにたどり着く論理的な整合性を見ていきます。

この質問は、例えばクライアントとのミーティングの目的や、ゴールの設定に使うと効果的です。また、「それで、どうするのか?」ということにも使えます。課題だけ出して終わり、文句だけ言って終わりというのはよくありますが、効果が出るところまで考えないのであれば、最初からやらないのと同じです。

 

自分以外の人に使うならば、誤解を招かないように

この2つの質問、Why so? So what?と呼ばれ、よく知られていますが、重要なのはいかに切り口を作り、複眼的に見ていくのかということだと感じます。

また、自分以外の相手に使うならば気をつけてほしいことが一つあります。非常に空気を読む人にこれを使うと修辞的に捉えられ、文字通り追い詰められてしまうことがあります。それでも、ストレートトークとして、他意がないことを明らかにしてビジネスの認識合わせに使えば、強力な思考ツールになるはずです。